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言葉も国境も越えて伝わった「海外挙式への熱い思い」

挙式会場
パーティー会場

「パラドールで式を挙げたい」という新郎新婦がいらっしゃったのは、まだ海外挙式が今ほど一般的ではなかった頃のこと。

パラドールとは、スペインにある古城や宮殿、修道院などの歴史定期建造物を修復した「国営ホテル」のことを言います。今でこそ、パソコンで「パラドール 挙式」で検索すれば、色んな情報を目にすることができますが、当時はインターネットも整備されていませんでした。海外挙式と言えば、せいぜいハワイ・グアムどまり。私達も「パラドール?」「スペインで挙式?」という手探りでのスタートでした。
とりあえず、海外挙式を手掛けている旅行代理店をいくつも当たって、何とか、お二人のイメージに沿う会場をアンダルシアに見つけたのですが、あいにく式を予定していた9月は観光シーズン真っただ中。世界中からの旅行客で予約一杯の状態でした。けれど、フラメンコを通じて知り合い、本場スペインのパラドールでの挙式を夢見る、新郎新婦のお顔を思い浮かべると、簡単にはあきらめきれませんでした。
「何か、自分にしてあげられることはないか…」私は藁にもすがる思いで、手紙をしたためることにしました。「挙式を希望しているお客様がいらっしゃいます。何とかしてあげることはできないでしょうか」という文面を外国語のできる友人に代筆してもらい、パラドールの支配人宛に送ったのです。
神にも祈るような気分が続く中、ほどなくして、返事がきました。「そこまでして他人の幸せのためにがんばる人が、遠い日本にいる」ということを粋に思ってもらえたらしく、常連さんの一泊分を譲っていただくことができました。それまでの事情を包み隠さず伝えていたこともあり、半ばあきらめかけていた新郎新婦ですが、私からの報告を聞いて大喜び。しばし絶句された後「ホンマですか……ホンマに、ホンマですか」何度もそう聞き返されたのをよく覚えています。
その後は、海外挙式を手掛ける専門の会社と、現地のスタッフに託し、私自身は結婚式に参加することはありませんでしたが、挙式後、新郎新婦が焼き増しした写真と御礼のお手紙をお送りくださったおかげで、私も幸せな気分に浸ることができました。
ちなみに、私にとって海外挙式を担当するはそれが初めてのことで、とても思い出深い案件だったこともあり、一連の経過と写真をまとめてファイルに保管していました。その後、新郎新婦は故郷の金沢で披露宴を行ったのですが、その際にゲストの方々に「パラドールで挙式を挙げる上で、どんな苦労があったのかを知ってもらいたい」ということで、まとめていたファイルを差し上げたところ、大変喜んでいただきました。
あれからもう10年以上も経ちましたが、お二人とは今なお、深いお付き合いをさせていただいています。「簡単にNOと言わない。できない理由を探すのではなく、どうしたらできるかを考える」「あきらめさえしなければ、意外にどんな夢も叶えられる」という今のLuceのスタンスは、この時、培われたのだと思います。

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